2016年10月18日火曜日

刀になった魚の話~むっちー昔話~

むか~しむかし。

この辺りの山の上には一体の鬼が住んでおった。

その鬼は毎年冬籠りの準備のため、秋になると村に下りて来ては丹精込めて作った農作物や保存食を取りたい放題取りあさり、村人たちはほとほと困り果てておった。

ある満月の夜、村の男衆はいつものように村長の家に集まり、鬼をどうするかを話し合っておった。

「なじょにすっぺかねぇ」

「戦うにしても村には鍬や鎌ぐれぇしかねぇからなぁ」

「ばか。鍬や鎌でどう戦うんだ」

そんな中、若い村人がこんなことを言い出した。

「んじゃぁよ、畑だの田んぼだのに縄張ってさ。そこに『さんま』吊るしたらどうだべねぇ」

若者の言葉に、村人たちは目を白黒させた。

「さんまぁ?さんまって、あの魚のさんまか?」

「んだ。食いきれねぇぐれぇ獲れるし、おまけに背中は青びかり、腹はギンギラ。今夜みてぇな月明かりに照らされりゃあ、立派な刀に見えると思わねぇか?」

村人たちはしばし闇の中、月に照らされたさんまの姿を思い描いてみた。

「まぁ、他に手があるわけでもねぇ。ためしにやってみる価値はあっぺ」

村長のその一言で、翌日の朝からさんまをならべる用意がはじまった。

男たちは畑や田んぼの四隅に杭を打ち込み、女や子供たちは縄にさんまを通しながら、これで鬼があきらめてくれるならという思いで一生懸命作業に打ち込んだ。

日もとっぷりと暮れ、さんまを吊るし終えた村人たちは、残ったさんまを全て焼き、それをつまみに酒盛りをして景気を付けて、たちまち寝てしまった。

その夜。

村人たちのもくろみ通り、鬼は山から里へと駆け下りてきた。

昼間、鬼は山の上から村人たちがなにやら作業をしているのを見逃さなかった。

鬼は喜び勇んで、村の中へと足を一歩踏み入れた。

その瞬間。

鬼は村の様子がおかしいことに気づいて歩みを止めた。

月はでているのに、村中黒い霧で覆われている。

しかもぷーんと鼻を尽く不気味な生臭さ。

ふと畑や田んぼを見ると、月明かりを弾いた小刀がびっしりと満遍なく突き刺さって見えるではないか。

異様ともいえる村のその有様に、鬼はぶるぶる震え、獲るのも忘れてたちまち山へ逃げ帰ってしまった。

翌朝、村人たちはまったく荒らされていない畑や田んぼと、朝日に照らされて光り輝くさんまの姿を見て、驚き、そして喜びの声をあげた。

それからというもの、毎年秋になると村人たちは魔よけの意味も込め、皆でさんまを焼いて大いに酒盛りをした。

さんまに「秋・刀・魚」の漢字があてられたのは、この時からである。


はい、どうでしたか?むっちーが昨日寝ながら考えた昔話は。

秋ですからね。

創作の秋ということで。

当然ただ作るだけじゃつまらんので、せっかくだから大船渡の秋の特産品・さんまを絡めてそれっぽく作ってみました。

これも「さんまのはなし」に載るかなぁ・・・。

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